シーン4

きーんこーんかーんこーん  チャイムのなる音。

図書室で資料を集める剛と麗子。

「あーあ、やってらんねえよ。なんで麗子と一緒に社会科の資料を探さなきゃなんないんだよ。」
言いつつも資料を探す剛。 その後ろには同じように本棚に向かう麗子。
「嬉しいなら嬉しいと素直に言えば良いのに。」

剛振り向きそして他の場所へ向かおうとする。
「あっちさーがそう。」

その後姿に
「昨日差し上げた服はどうしたの。」
剛は麗子のあげた新品の制服を着ていなかった。 麗子にはそれが不満だったし不思議だった。

剛は振りかえりながら憮然と
「あんなの着てられねえよ。 それより昨日定岡が俺の服、本当に焼却炉に入れようとしたんだぜ。」
あの後気を取り直して定岡を追いかけ制服を取り戻したのだ。

麗子は本棚に視線を戻しながら、
「当然でしょう。あんなボロキレを平気で着ていられる神経が理解できないわ。」
言ってはいけない言い回し。自分でも気づいているのに。

麗子の言葉に呆れながら、
「ホントに友達なくすぞ。」

「出来の悪い友達より犬を飼う方がまし。」 語尾が淋しげだった。

「くっ、ふぅ・・・・・・。」 ため息をつく剛。



「ジャーン。剛どうだ似合うか?」
稔登場。 真新しい制服を着ている。
麗子が剛に上げた制服だ。

ああ、良く似合うぜ。」

「本当にもらっちゃって良いのか。」

「ああ。」

「そう言うわけだから、新藤サンキュウー。 じゃあねぇ〜。」稔去る。

その会話にどこか淋しげな表情で麗子背を向け他の本棚へ・・・・・・



背の高い本棚の梯子をのぼる麗子。二つの梯子にそれぞれの足を掛けながら・・・・・
「ちゃんと本人が着るのを確かめるようにと言いつけておいたのに・・・・定岡の給料20%カットだわ。」


ガタタッ  二つの梯子がそれぞれに左右に動き出す。

「うう、何これ。」 剛はそれを眺めている。

「ちょっと、あなた梯子を押さえていなさい。」相変わらずの命令口調である。

「へいへい。」剛は麗子に歩み寄る・・・・・・麗子の姿態を改めて見る。

『あっ、へー、今まで気づかなかったけど麗子って良いプロポーションしてんだなぁ。』

「何見てんのっ!! 早く助けなさい!!!!」

「ふふふーん、へへ。」

「覗いたら警察を呼ぶわよ。」

「頼まれたって見やしねえよ。」

「あ、あなたって本当に下品でデリカシーがなくて人の道に反するような存在ね。」
いつもの憎まれ口をたたく。 こんな時でも新藤麗子の態度は崩さない。

「お前にだけは言われたくない。」

「なんですって。ああっ・・・いやぁぁぁ。」
剛に言い返そうとした瞬間、またも梯子は左右に離れその距離を開く。

「何やってんだぁ。」

「見てないで助けなさい。」
麗子の手足は身体を支える為にプルプルと震えている。

「同時に二つの梯子を登るなんて考えらんないなぁ。」
剛は平然としている。 余裕、余裕。

「だからあなたが登れば良かったんでしょう。」
まだ自分の論理を振り回す麗子。

「どう言う理屈だ。」
剛はちょっとムッとしてきた。

「あんな高いところの本を何故わたしが・・・・・・・ああっ。」
もう、これ以上は無いぐらいに麗子の手足は開かれている。
プルプル振るえて・・・・・・・・限界は近い。

「お前凄いなぁ。 体操選手も真っ青だぜ。」

「こ、この新藤麗子を・・・お前呼ばわりするなんて・・・・・・」
声までも振るえている。 もう限界。

「けっ、じゃあずっとそうしてろっ。」剛は背を向け去ろうとする。

「あっ、待って。」

「助けてください剛様って言ってみろ。」

「誰が、そんなこと・・・・」
あくまでも強がる麗子。

「じゃあな。」左手を上げる。

「お願い・・助けてく・だ・さ・・・・・ああああっ。」
落ちた!!!   その四肢は梯子から離れ、身体は真後ろに向かって落ちる。

「麗子っ!!!!」

麗子と伴に落ちる多々の本達。 剛は力いっぱい床を蹴る。
ガッ。  
かろうじて間に合い麗子は剛の腕の中に落ちた。

大丈夫か」その手の中に麗子を抱えて剛は言った。

「う、うっ・・・・」 目を開ける麗子。そこには、心配そうに覗き込む剛の顔が。

見詰め合う二人。 しかし、助けた瞬間のまま剛の左手は麗子の胸に。

「あ、はっ。  いやぁぁぁぁ変態、手を離しなさい。もう、嫌らしいんだから。」
慌てて立ち上がる麗子。

「あのなあ。俺が支えなければ怪我してたぜ。」

「だいたい、あなたがしっかりと梯子を押さえていなかったからいけないのよ。」
またしても憎まれ口。 しかしその頬は赤く染まっていた。

「くっ、」

「この私に怪我でもさせたらただでは済まなかったわ。」
続ける麗子。

「くっ、お前には感謝するって感情はないのかよ!!!!」
麗子の言葉に剛は熱くなる。 もっともだ。

「あっ・・・・。」瞬間の沈黙。「このわたしにお説教をするつもり・・・なんてゆう身のほど知らずな人なの。」
剛の強い口調に驚きながらも、憎まれ口を続ける麗子。

「もっと素直になれよなぁ。」
本を集めながら剛はつぶやく。

「何ですってぇ、良く聞こえなかったわ。」
相手の反応を楽しむ表情に戻りながら尚も続ける麗子。

「いいかげんにしろよっ!!!!」
剛は拾い集めた本を麗子の両手に渡す。

「あっ・・・・・」
驚きの表情・・・・・・手足の震えは止まっていたが、心が震えていた・・・・

「 あとは一人でかたせよ。」
剛は去って行く。

「あ・・・・・・・・・・・・」
一人残される麗子・・・・・・その表情には後悔が見て取れた。


 ○後書き
    ここまでが「わがままな秋桜」前編です。
    ご存知の通りTV版「下級生」の第8集です。
    久しぶりに麗子お嬢様のお声を聞くことが出来ました。 
    麗子お嬢様萌えのなりぽしにとっては、それだけで充分。
    
    TV版「下級生」は、なりぽしの住んでいる地方では未だに放送されていません。
    どれだけビデオの発売日を待っていたことか・・・・・・・・
    
    このSS?は、そのビデオを文章に書き直しただけのものですから、
    なりぽし自体考えた部分はありません。
    ただセリフは一字一句間違い無いように何度もビデオを巻き戻しました。
    それにしても・・・・なりぽしの文章は硬いような気がします。
    
    そんなものですが数々のシーンを思い起こしていただければ幸いです。

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もう帰ろう/I'll go home
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