移り行く季節(とき)の中で 麗子の想い

 

 ひでのりさんから頂いた初めてのSSです。

 当然、麗子お嬢様が主役ですぅぅぅ。 瑞穂と涼子ちゃん相手に恋の戦いが始まります。

   わぁいヽ(∇⌒ヽ)(ノ⌒∇)ノわぁい♪<喜ぶなりぽし 


涼やかな風は色鮮やかな紅葉の到来を告げ、暑き夏と共に過ぎ去りし記憶を思い出の彼方へと誘う・・・

ここにも一人心の中に秘めたる想いを隠し、秋風のように装う女性がいた・・・

彼女の名は新藤麗子、ここ卯月町にある卯月学園の生徒である。

彼女は、卯月町の大地主、新藤泰蔵と元舞台女優であった妻の夏子との間に生まれた長女である。

しかし、美しかった母夏子は麗子が3つの時に胸を患い他界していた・・・

父泰蔵も貿易会社を経営していて、ほとんど家には居なかった。

普段、麗子の周りには使用人や黒服しかおらず、友達など居なかった麗子には、

父から貰ったヌイグルミ達が唯一の話し相手だった・・・

友達が出来ないのには訳があった。

彼女がいくら気軽に接しようとしても、周りの人間は、
それを許さなかったのである。

誰もが新藤家のお嬢様としてしか、自分を見てくれなかったのだ。

そんな麗子が心を閉ざすのに時間はかからなかった・・・

期待感は苦しみを倍にする、ならば最初から嫌われよう。

麗子はいつしか自分から
高慢で嫌味なお嬢様を演じるようになっていった・・・


しかし、そんな麗子に転機が訪れる、そう長瀬健太郎との出会いである。

いつしか彼女は求めていた。

本当の自分を見てくれる人を・・・・・・

お嬢様としてでは無く、ただの女として見てくれる人を・・・・

そう理解者と言う名の人を・・・

 

 

 

麗子

「今日も私はリムジンで登校・・・本当は彼と、健太郎君と一緒に登校したいのに・・・」

麗子は運転手の定岡に聞こえないように、心の声を小さくぽつりと呟いた・・・

彼女の憂鬱はそれだけでは無かった。

同じクラス3年C組だけで、恋のライバルと
呼べる人間が二人もいたのだ・・・

彼女達の名は結城瑞穂、そして加納涼子である。

他にも健太郎に想いを寄せる女子はまだまだいるようである。

その全容は麗子の知るに及ばない所であったが、
この二人に比べたら、とるに足らない存在だった・・・

麗子

「結城瑞穂、加納涼子・・・」

麗子は恋の障害となる二人の名を、無意識の内に口ずさんでいた。

定岡

「お嬢様、どうかなされたのですか?」

麗子

「定岡!! 黙って運転なさい!!」

定岡

「はっ!・・・すみません」

彼女も自分の声が、自然に大きくなってしまう事に苛立ちを覚えていた。

もちろんなのだが、結城瑞穂、加納涼子、両名ともに学園内での人気は凄まじい物であった。

容姿だけなら麗子も彼女らに匹敵する、いやそれ以上かも知れなかった。

しかし、高慢で嫌味なお嬢様というイメージが災いして、人気は低かった・・・

いや皆無と言った方が正しいかも知れない!!

麗子(そこ!! うるさい!!・・・バコッ!! ぷしゅ〜)

麗子にとって学園内の人気など、どうでも良い事なのだ。健太郎さえ自分を見ていてくれたなら・・・

しかし、最近の両名と健太郎との間には、麗子はヤキモキせずにはいられなかった。

特に加納涼子である。

学園のアイドルである結城瑞穂は、表立って行動を起こさないが、

加納涼子は、私こそが彼女と言わんばかりに健太郎にベタついていた。

そして、当の健太郎本人も満更ではなさそうなのである。

このところの涼子の態度は3年に進級した当初からは想像もつかなかった。

クールで男など眼中に無いと言った風なのに、
今はどうだ・・・まさに麗子にとっては、【伏兵】、大きな誤算である。

相変わらず他の男子の前ではクールなのだが、健太郎の前では猫にマタタビ状態である。

後藤稔に対しては健太郎の親友という手前笑顔を見せるが、そうでなければ無視だろう。

そんな涼子を見ても、自分は健太郎に想いを伝えられずにいた。

いつも心と言葉が、ちぐはぐなのである。そう言う意味でも、涼子が羨ましかった。

麗子

「どうして、私は素直になれないのだろう・・・」

言葉にしなくても、理由は分かっていた。

健太郎とはさんざん憎まれ口を叩き合ってきたのだ。

今さら好きですなんて、死んでも言えなかった・・・言えたらどんなにいいだろう・・・

麗子はいつも心の中で葛藤していた。

しかし、このままでは健太郎を瑞穂か涼子に
奪われるのは時間の問題だった。

そうこう考えているうちに、リムジンは校門前に到着した。

定岡は車を降りると、麗子の横のドアを開けた。

定岡

「・・・」

麗子

「定岡、それでは行って来るわ」

定岡

「行ってらっしゃいませ、お嬢様」

麗子は何やらブツブツと呟きながら、校門の中に消えていった・・・

 

 

 

教室はいつものように登校して来た生徒達でごった返していた。

麗子には取り立ててする事も無いので、ただ健太郎が登校して来るのを不機嫌を装って待っているのだ・・・

HRが始まる5分程前に健太郎は姿を表した。

健太郎の席は窓際の一番後ろで、その隣が麗子の席なのである。

健太郎

「オス! 麗子、今日も生理か?」

麗子

「ほんと、あなたってお下品ね! どうして、そういう事を言うのかしら!?」

健太郎

「だってさぁ、いつも不機嫌そうな顔してるぜ」

麗子

「毎朝あなたの顔を見る私の身にもなりなさい!」

健太郎

「麗子以外の女の子なら、毎日笑顔だぞ、きっと!」

麗子

「誰の事を言ってるのかしら・・・」

健太郎

「だから、麗子以外だよ・・・」

麗子

「固有名詞で答えて下さる、あなたの言う事なんて信じられないわ!!」

麗子の、この一言には実は深い意味があった。

この時、健太郎の口から出た名前こそ、健太郎の潜在意識が今、最も仲の良い女性と認識している者の名前なのである。

何気ない質問だからこそ、
その可能性は大なのだ。

麗子は健太郎の答えを、固唾を飲んで待った・・・

健太郎

「う〜ん・・・麗子かなぁ〜」

麗子

「えっ!!」

あまりにも以外な答えなので、麗子はつい不機嫌モードを解除してしまった。

健太郎の方に深い真意が無かったとしても、麗子は健太郎の潜在意識が私を見てると

勝手に思い込み、ほっぺを朱色に染めた、いや染めてしまった・・・

健太郎

「麗子・・・ほっぺが赤いぞ! 大丈夫か?(ニヤ)」

麗子

「あなたなんかと話をしてるから、知恵熱が出て来たのよ!!」

もちろん嘘なのは、健太郎にもお見通しである。

麗子は、困るとすぐ感情論に走るのだ。

麗子

「だいたい・・・いつも私を麗子麗子と呼び捨てにしないで下さる!!」

健太郎

「麗子だって、俺の事をあなたあなたって言うだろ!?」

麗子

「名前を呼ぶのが、汚らわしいからあなたなのよ」

健太郎

「俺は麗子の亭主じゃないぞ・・・」

麗子

「ふっ・・・趣味の悪い冗談ね!! 誰があなたと夫婦になどなるものですか!!」

健太郎

「だったら、俺の事をあなたと言うのは止めろ」

麗子

「あなたも私を麗子と呼ばないでくれるのなら、考えてあげても良くってよ・・・」

麗子は健太郎にそう言ってはいるが、内心は呼び捨てが嬉しいのである。

健太郎

「麗子ぉ〜冷たくするなよぉ〜なぁ〜麗子ぉ〜(ニヤ)」

麗子

「あなたと話してると、怒ってる私が馬鹿みたいじゃない」

健太郎

「麗子、女の子は笑ってる顔が一番カワイイんだぞ!」

麗子もさすがに、自分がどのような顔をしているか理解していた。

恋する乙女の顔である。

きっと今の自分は、結城瑞穂や加納涼子にも負けず劣らずの
顔をしている事だろう・・・

鈍感な健太郎でも、自分が健太郎を好きでいると気付いて
しまうのではと、内心ビビル麗子だが・・・

心配は無用である。 もうとっくに気付いている。

気付かない方がおかしい!!(笑)健太郎以上のアホでも気付く!!(笑)

麗子(うるさい!!・・・そこ!!(。-_-。) ・・・)

言葉が素直で無い分、顔に出る表情は他の女の子以上に素直で正直なのだ!!

そうこうしている内に、担任の教師三月静香が教室に入ってきた。

静香

「はい! みなさん、おはようございます」

生徒達が挨拶を返す。

静香

「今日のHRと1時限目を使い、2週間後の修学旅行の班分け等をします」

注)卯月学園は高3で修学旅行に行く学校なのです(作者より)

クラス中が、ざわめき立つ・・・

静香

「それで、男女3名ずつの班を作って下さい。班ごとの自由行動のメンバーです」

さらに、ざわめく教室・・・

「ハイッ! 先生」

静香

「なんですか後藤君?」

「旅館の寝室も同室ですかぁ〜」

男女共学の学校には、この質問をするアホが必ず一人はいる! σ(^◇^;)

静香

「ええ、そうよ」

クラス中の生徒

「ええぇ〜〜〜」

静香

「冗談です」

健太郎

「先生は今、僕の純粋な気持ちを汚したぁ〜」

静香

「純粋な煩悩ではなくて?・・・」

真由美

「みんなぁ! 健太郎と晴彦には気を付けた方がいいよぉ〜(笑)」

クラス1明るい女子、橘真由美の一言にクラス中が爆笑の渦と化す。

晴彦

「橘君!! 僕と健太郎を一緒にしないでくれるか!?」

真由美

「あっ! わりぃ わりぃ 晴彦は特に注意だよぉ〜(笑)」

クラス中はさらにざわめき、健太郎は腕組みをしてうんうんと頷いていた。

そうこうしている内に、班はどんどん決まっていった・・・

麗子にとって、この時が一番憂鬱な時なのだ。

いつもそうだった・・・必ず自分が
最後まで決まらないのだ・・・

そして必ず、クラスの優等生女子が、偽善とも同情とも
思える行動に出るのだ。

新藤さん私達の班に来ない? 

偽善や同情を受けるくらいなら、
一人でいる方がイイ!! 

しかし、学校とは集団行動を学ぶ場所でもあり、そうも言って
はいられないのだ。

渋々それに従う・・・いつしか友達より犬を飼う方がイイと、
自分に言い聞かせていた。

卒業と共に居なくなる友より犬の方がイイと・・・

麗子がそのような忌まわしい過去の妄想に耽っていると・・・

健太郎

「麗子! おい麗子! 聞こえないのかぁ?」

麗子

「えっ!?」

健太郎

「麗子さぁ、俺と同じ班に来ないか?」

本当は飛び上がりたいくらい嬉しい麗子、しかし・・・

麗子

「どうして、私があなた如きと同じ班に・・・」

健太郎

「だって、しょうがないないだろぉ〜女子が一人足りないんだから・・・」

麗子

「他の女子を誘えばいいでしょ?」

健太郎

「おまえ以外、全員決まってるんだからしょうがないだろ!!」

麗子の内心は涙で濡れていた。健太郎は自分だから誘ってくれたのだと思ったからだ。

しかし、麗子は強気を装って・・・

麗子

「しょうが無いわね、我慢しても良くてよ」

健太郎

「可愛くねぇぞぉ〜」

静香

「はい! 後は女子が2人程まだ決まって無いわね。鈴木さんは佐藤君の班、橘さんは佐竹君の班でいいわね!?」

晴彦

「先生、橘君と涼子さんを替えて頂けないでしょうか?」

静香

「加納さん、どう?」

涼子

「イヤです!!」

加納涼子は、間髪入れずに即答した。

静香

「という訳なので、佐竹君よろしくね」

涼子の意思により晴彦の提案は、あっさりと却下されたのである。

晴彦は最も嫌いな女子、橘真由美と同じ班に決定した。

大抵の女の子がテリトリーの晴彦も、
橘真由美と新藤麗子だけは、ノーサンキュウだった・・・

真由美

「健太郎! 酷いよぉ〜!! どうしてさっき頼んだのに混ぜてくれなかったのさぁ〜」

健太郎

「ばっ馬鹿・・・黙れ真由美」

健太郎にとって、こいつにだけは聞かれたく無いと言う内容を、そのこいつ新藤麗子に聞かれてしまった・・・

麗子

「ふっ・・・ふふふふふ・・・健太郎君も素直じゃないのね」

素直じゃ無いのは、新藤麗子この人である。彼女の為にこそ相応しい形容詞なのだ。

理由はどうあれ、健太郎が自分を好意で誘った事に、麗子は感謝の気持ちと嬉しさで胸がいっぱいだった。

その為、名前を呼んでしまった事に気付かないでいた・・・

健太郎

「麗子ぉ・・・今、健太郎君て呼ばなかった?・・・」

麗子は一瞬しまったと思いながらも、精一杯平静を装い・・・

麗子

「あなたは、また言われないと解らないのかしら?・・・いい! あなたは顔と頭と性格だけで無く、

耳もおかしいんじゃなくて?」

健太郎

「麗子ぉ〜この前は、性格は入ってなかったぞ!」

麗子

「男性が細かい事に拘ると、モテなくてよ!」

相変わらず、感情論に走る麗子だった・・・

静香が手を二度程ならした。生徒達の視線は、教卓の美人教師に注がれた。

静香

「はい! それでは・・・班が決定したみたいね! 1時限目は、班ごとに大まかなコースを決めて頂戴!

 それじゃ続きは後で・・・週番!!」

週番

「起立! 礼! 着席!」

所で、健太郎の班のメンバーはと言うと・・・男子は、健太郎、稔、慎二・・・

注目の女子は、新藤麗子、結城瑞穂、加納涼子である。

とある人物の作意を感じられるが、
ここは目をつむりましょう・・・(笑)

稔は親友なので説明を割愛し、慎二に関しては健太郎以外に話せる友?が居ないので、なし崩し的に決定したのである。

問題は女子の方で・・・涼子は健太郎の所に、いの壱番にやって来て
芸術に燃やす筈の情熱を健太郎に放射したのである。

晴彦の必死の引き抜きには、
OUT of 眼中だった・・・

瑞穂に関しては、涼子に負けじと、すべての誘いを必死にかわして手に入れた席である。

この二人を有する健太郎班は、他グループの男子(特に晴彦)の羨望の眼差しを受けていた。

しかし、この女子3名が一緒に居て、修羅場が訪れない訳が無い・・・

特に・・・涼子の麗子に対する視線は、敵を見る眼光を発していた。

健太郎と真由美のやり取りに始まり、健太郎と麗子の事もすべて見ていたのだ・・・

涼子の18年の女の勘が、麗子は危険だとアラームを鳴らし続けていた。

涼子

「麗子さん、よろしくね!」

(何がよろしくなのだ・・・作者にも理解不能・・・;^_^A)

涼子は言葉とは裏腹に、口元はニヒルな笑みをかもし出していた・・・

「うおぉ〜みこちゃんがいればなぁ〜」

(腰を振りながら叫ぶな! みこちゃんは聖女だぞ!!)

こうして高校生活最大の行事とも言える修学旅行は、間も無く幕を開けるのである!!

 

 

 

続く・・・( ^_^)/~~~チャオ!

ひでのりさんへの
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後書きめいたもの
こんにちは!! 作者のひでのりですぅ〜(^^)
予定の倍の長さになってしまいましたので、一応続き物にする予定です。
当初は、涼子ちゃんはここまで出番は無かったのですが、麗子、涼子は書き易いので、
ついつい強くなってしまいます;^_^A
修学旅行と言う事で、ライバルに瑞穂と涼子を持って来たのですが、どうでしょうか?
私的には、結構楽しいのですが・・・o(^▽^)o
結構長めのSSになってしまい、なりぽしさんには申し訳無く思っておりますm(_ _)m
読み易いようにと、会話の所で誰の言葉かわかるようにしたのですが、いかがですか?
下級生初SSですので、至らない所も多いとおもいますが、
これからも宜しくお願いしますぅ〜v( ̄∇ ̄)v
ネット最強!! 麗子お嬢様HPのマスター、なりぽしさん今回の掲載が実現した事に、
心より深く深く感謝しています・・・では~~~\(^^ )( ^^)/~~~アドゥ〜でございますぅ〜〜
 
麗子
「なりぽし! でかしたわよ!!」
 
なりぽし
「その言葉だけで、なりぽしは・・・なりぽしは・・・(T_T)嬉し泣き」

 と、なりぽしのセリフまで書いて頂きました〜♪ ヽ(´▽`)/へへっ

 ひでのりさんありがとうございました〜♪


5月、梢を渡る風と共に/May wind around the trees
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