おやすみ

 

夜も更けた八十八町。
その海に近い武家屋敷の一室に、悩める少年がいた。
「おい!」
「へ?」
「誰が少年だ?」
「あ、失礼。」
悩める少女が...
「おい!」
「え?」
「男扱いしたんだから、美くらいつけたらどうだ?」
「わがままな奴だな。」
「当然だろ。」
「わかったよ。」
悩める少女美が...
「なめてるのか?」
「うん。」
「...」
「小説の美少女ってのは、作者と喧嘩したりはしないもんだ。」
「お前がやらせてるんだろ。」
「うん。」
「くだらない行数稼ぎしてないで、さっさと始めろ。」
「わ、わかったよ。」
「誰も読んでくれなくなるぞ。」
「うう。」
夜も更けた八十八町。
その海に近い武家屋敷の一室に、悩める美少女がいた。
「うう、眠れない。」
「だめだ、明日久しぶりのデートだと思うと緊張して眠れない。」
説明的な悩み方だ。
「もう眠らなきゃ、明日居眠りしちゃう。」
人間、強迫観念を持つと、眠くてもも眠れなくなる物だ。
「そうだ、牛乳には入眠効果があるってテレビで言ってたっけ。」
「ホットミルクでも作って寝よう。」
動くとなおさら眠れなくなる。
さて、そのお相手の少年は?
こちらは、八十八町から2駅ほど離れた町のアパートの一室。
「グオー、スー、ぴよぴよぴよ。」
見るまでも無かったか。
こうして、2人の夜は更けていく。
翌朝。
少年のアパートにほど近い遊園地の前。
「いずみの奴遅せ〜な、何やってんだ。」
「ごめん竜之介、待った?」
「待った?じゃね〜よ、1時間遅刻だぞ。」
「ごめん。」
「あれ?いずみ、お前顔色が悪いぞ。」
「そ、そうか?走ってきたからかな?」
「走って顔色が青くなるか?」
「ま、まあいいじゃないか、さあ中に入ろうぜ。」
「ホントに大丈夫なのか?」
「しつこいな、大丈夫だってば。」
「そうか?」
「さあ、行こう。」

「なあ、竜之介?」
「何だ?」
「どうして1人暮らし始めたんだ?」
「考えても見ろよ、今あの家には唯がいない。」
「それが関係あるのか?」
「今焼き餅焼かなかったか?」
「そ、そんなことないよ!」
「そうか。」(チッ!)
「それで?」
「俺があの家に残ったら、美佐子さんと親父と俺の3人だ。」
「ああ。」
「いくら俺でも、新婚家庭の邪魔をするほど無粋じゃない。」
「そうか、そうだよな。」(ホッ)
楽しい時間はあっと言う間に過ぎる物で、早くも夕暮れ。
(別に急いでるわけではない。)
「ふあう〜。」
いずみが、あくびをかみ殺したのを知ってか知らずか、竜之介が提案する。
「もうこんな時間か、最後に観覧車に乗っていこうぜ。」
「う、うん。」
「ATARUみたいに、地下にある遊園地もおもしろいけど、やっぱり観覧車は屋外じゃないとな。」
「....」
「あれ。」
「....」
「いずみ?」
「す〜。」
「いずみ?寝てやがる。」
「す〜。」
「うんせ、うんせ。」
「す〜。」
「くそ、寝てると重いぜ。」
作者を差し置いて、いずみとデートした罰だ。
「ベンチで少し寝かせていくか。」
「くう〜。」
「人の苦労も知らないで、よく寝てるな。」
「す〜。」
「よっと。」
「こうして改めてよく見ると、いずみってかわいいよな。」
よく見なくてもかわいい。
「よく...寝てるよな。」
こらこら。
「起きない...よな。」
あ〜、竜之介君。
「何だよ、さっきから横でごちゃごちゃうるさいな。」
よく寝てるからって、よからぬ事を考えないように。
「うるさい!いい所なんだから、引っ込んでろ。」
ボクウッ
ううっ

「う、う〜ん。」
「...。」
「あ、あれ?」
「目が覚めたか?」
「り、竜之介!ごめん私。」
「いいから、もう少しそうしてろ。」
「ずっと..膝枕しててくれたのか?」
「ああ。」
「どれくらい寝てた?」
「2時間位かな?」
「ごめん。」
「いいさ、お前のかわいい寝顔も見れたし。」
「ごめんな、せっかくのデートなのに。」
「いいけど、朝から眠かったんだろう?」
「うん。」
「昨夜、何時間寝た?」
「実は...寝てない。」
「それで顔色が悪かったのか。」
「だって、卒業してからお前の引っ越しや何かで、久しぶりのデートだったし。」
「で?」
「だから、緊張しちゃって眠れなくって、眠んなきゃいけないと思うとよけい眠れなくて。」
「わかった、もういいから。」
「ごめんな。」
「本当に悪いと思ってるか?」
「うん。」
「だったらこれから言うことが守れるなら許してやる。」
「何?」
「デートの時でも、体調が悪いときはきちんと言うこと。」
「うん。」
「デート出来なくなるよりも、お前が体壊す方がいやだからな。」
ぐりぐり
「ふふふっ。」
「おいおい、頭押しつけると痛いぞ。」
「馬鹿!」
ぐ〜りぐ〜り。
「さあ、もう暗いし、そろそろ帰るか。」
「やだ。」
「もうすぐ閉園だぜ。」
「じゃあ、閉園時間までこのまま....ね。」
「しょうがねえな。」
「なあ。」
「ん?」
「私が寝てる間、変なことしなかっただろうな。」
「お前、俺を誰だと思ってるんだ。」
「竜之介だからこそ聞いてるんだよ。」
「したって言ったら?」
「ん〜、責任取って、結婚してもらう。」
「じゃあ、いっぱいした。」
「馬鹿....大好き。」

 

後書き

ど〜もど〜も「す」です。

たまにやりたくなるんですよね、こういう少しおちゃらけた奴。

作者がちょろちょろしてうざったいとか、楽屋落ちとか言う意見もあるでしょうが、こう言う作品なんです。

おサルさん、気に入ってもらえたでしょうか?(ヒロインがいずみだからイヤって意見は却下です。)

では、また別の作品でお会いしましょう。