愛は静かな場所へ降りてくる
「ボクのこと...うぐぅ...忘...れて...」
「そして...いつものように...笑って」
「あゆ。あゆ。起きなさい」
「ここ...どこ?」
「...ここは、終点」
「終点?」
「そう。夢の...終点」
「終点か」
ずっと、夢を見ていた。
終わらない夢。
いつまでも続く夢。
終わらないはずだった夢。
その夢が...終わる。
最後に、あの人を想って。
泣いていた。
ボクのために。
二度もあの人の前から消えた。ボクのために。
あの人は涙を流し続けていた。
笑顔が見たかった。
一緒に歩きたかった。
...いつまでも...一緒にいたかった。
でも、それこそは夢。
かなえられることのない。本当の...夢。
ボクのために悲しませてしまった。
笑顔が見たかったのに。
一緒に笑っていたかったのに。
姿を見せるべきじゃないとわかっていた。
ただの友達でいいはずだった。
いつの間にか、姿を見せなくなる。ただの友達で。
でも、自分の心はだませなくって。
あの人の気持ちを知ったら、誤魔化す事なんて出来なくって。
悲しませた。
あんな顔、させるつもりじゃなかったのに。
「さあ。行きますよ」
「うん。夢から覚めて、あなたと一緒に行くんだね」
「行きますよ」
「ち、ちょっと待って」
「もう時間がありません」
「もう少しだけ」
泣かないで。
ボクのためにこれ以上。
願い事...叶えてくれるって言ったじゃない。
お願い。泣かないで。
「さ、時間です」
「うん」
神様。
もし、叶えてもらえるなら。
願い事、ひとつだけ。
ボクの、願いは...。
あれから、時は止まることなく。
日常は繰り返し。
俺はここにいる。
「あゆ。俺、笑えてるか?」
半分だけ、叶えるることにした、あの日の願い。
「お前の望んだように。いつもの通り。」
残りの半分は、とても叶えられそうにないから。
「お前を忘れることは...出来ないけど。俺、笑えてるか?」
クウン クウン。
「ん?」
アン!
「どうした?お前、野良か」
アン!
「食べ物は、持ってないぞ」
アン!アン!
「はははは。自分のしっぽ追いかけても、捕まらないだろう」
アン!
「元気だな。お前」
アン!
「名前何て言うんだ?お前」
アン!
「しゃべるわけないか」
クウン。
「...お前...似てるな」
アン!
「よし。今日からお前はあゆだ。来い、あゆ」
アン!
時は流れて行く。
止まることなく。
やがて、辛かった記憶も風化させ。
どんな想いも、いつかは記憶の一つに変わって行く。
それは、悲しいことなのだろうか?
それとも、幸せなこと?
時は流れて行く。
ひとつの夢を終わらせ...。
ひとつの願いを叶え...。
「ボクの願いは...。どんな形でもいい。あの人が気付かなくても...。あの人の傷が癒えるまで。あの人が心の底から笑えるようになるまで...。あの人の事、見守らせて」
ど〜も す です。
今回は「Kanon」初挑戦です。
あゆの、あのシナリオが好きな方には、不満に感じられる方もいらっしゃるかも知れませんが、私なりに、ラストシーンを再構築してみました。
以前日記にも書いたのですが、ど〜もあゆのシナリオは納得行かない部分があって。
気に入っていただけると良いのですが。
今回も、難産でした。
当初は、長編のつもりで考えていたのですが、矛盾点を書き直している間にこの長さに...。
あ、作品中で、あゆと会話を交わしている人物についてですが。
人形に積もった「想い」だと思ってください。
で、この人物が、「奇跡」の後押しをしていたと。
本来、作中でわからせるべきなのでしょうが、私の腕では、会話の流れを止めずに知らせることが出来ませんでした。(苦笑)
では、また別の作品で。