地上の星座
第二話 〜いずみ〜
夜中に目が覚める。
...午前3時。
隣からは、竜之介のたてるかすかな寝息。
あ、布団蹴っ飛ばして。
寝相悪いんだから。
風邪ひくぞ。
そっと布団を掛け直す。
「......う〜ん。いずみ」
ふふっ。
どんな夢見てるんだろう?
私の夢?
「....う〜ん、いずみい。や、やめて。助けてくれ〜」
....布団はがしてやろうか?
「...う」
いきなり強い嘔吐感。
「くっ」
戻す物もないのに...。
「やっぱりこれは...」
多分間違いない。
私のお腹には、子供がいる。
もう3ヶ月、生理はない。
「注意してたんだけどな」
鏡に映る、疲れた顔。
私自身に話しかける。
「どうする?」
私と、竜之介の子。
もちろん産みたい。
でも、今の状態で産むことに対する不安もある。
竜之介は、多分喜んでくれるだろう。
でも...。
それでいいんだろうか?
今の経済状態で、家族が増える。
二人そろって不定収入な状態で、子供を産む。
ましてや、出産となると私の収入は、最低でも1年はなくなる。
正直、かなり苦しい。
もっと不安な事......。
竜之介が、それを何とかしようとする事。
これは杞憂ではすまないだろう。
多分竜之介なら、家族のための就職を口にする。
それは、嬉しくないと言ったら嘘になる。
自分よりも、家族を優先してくれると言うことだから。
...でも。
それに甘えたくない。
それは、私の好きな竜之介じゃないから。
今、竜之介は自分のやりたいことを見つけるために、就職しないままでいる。
それは、傲慢かも知れない。
私は、そんな竜之介を...いや、そんな竜之介だから。妥協を知らない竜之介だから好きになった。
竜之介の足手まといになることだけは、したくない。
そんなことをしたら、私が、私自信を許せないだろう。
でも、このことが知れたら、きっと竜之介は自分のやりたいことを犠牲にするだろう。
あいつは家族との縁が薄く育ってきた。
だから、自分は家族のため、どんな犠牲でも払おうとするだろう。
そう言う奴だ。
「はあ」
どうすればいいんだろう?
どうしても、答えが出せない。
タイムリミットはどんどん迫ってくる。
...中絶?
せっかく授かった、私たちの子供を?
...愛する人との間に出来た、愛するまだ見ぬ子供を?
何の罪もない子供を?
「竜之介...どうすればいいんだろうな」