Miracle

目覚ましが鳴る前に目が覚める。
肩を抱いてくれている、彼の手を感じる。
おっと。
鳴る前に、目覚まし止めないと。

彼は、まだ寝てる。
目を閉じた顔...可愛いな。
愛しい人。
私の、初めての...おとこ。

あ、髭が少し伸びてる。
...こいつって、鼾かいたんだ。
規則正しいリズムで、鼾を繰り返す。
ふふ。
こうしてるのって、何かいいな。

筋肉質の胸板。
私の肩に手を回してるから、筋肉が盛り上がってる。
....胸に、ほっぺたを、すりすりしたくなって来ちゃった。
...起きちゃうよな。
...今日は、バイト休みだって言ってたし、寝かせておいてあげたいな。
よく...寝てるよな。
少しくらいなら...。
...やっちゃえ。

すりすり

「う〜ん」
あ、やっぱり起きた...かな?
「ふん。」
あ、また鼾。
よ〜し、もうちょっと。

すりすり。

ふふっ。
「起きてるぞ」
「え、ええ。い、いつから?」
「さっき」

し、しまった。
「わ、私、朝御飯作らなきゃ」
急いで体を起こそうとして、気が付く。
あ〜。
わ、私、裸のままだ〜。
「り、竜之介」
「うん?」
「ち、ちょっと向こう向いてて」
「どうした?」
「ふ、服を着るから、向こう向いて」
「今更、恥ずかしがる事でもないと思うが」
「そう言う問題じゃないの」
「はいはい。これでいいか?」
「あ」
「どうした?」
当たり前だけど、肩を抱いてた竜之介の手が離れる。
う〜、何か肩が寂しいな。
「な、何でもないよ」
「うん?」
そ、そんな事、恥ずかしくって説明できないよ。
「あ、材料何がある?」
「へ?何の」
「何のって、朝御飯の」
「...カップ麺」
「...」
「いや、冷蔵庫に少しはあるかも...」
「...いいよ、適当に探すから」
こいつ、一人で暮らしてた間、どんな食生活してたんだろう?
「じゃあ、作ってくるから、そろそろ起きろよ」
「ああ、期待してるぞ」
まったく、男の一人暮らしって奴は...。

「どうした?ふらふらしてるぞ」
あ、歩きにくい。
...まだ、足の間に挟まってるみたい。
夕べの名残。
...ふふ、痛みも愛おしい。
「な、何でもない。急に立ち上がったから、目眩がしただけだよ」
「いきなりふらついたり、赤くなったり、変な奴だな」
...この鈍感男。


「...いずみちゃん」
「な、何?」
「この、黒い物は何?」
「...目玉焼き」
うう、情けない。
竜之介のためにと思ったら、気合いが入りすぎて、失敗しちゃった。
「そっちの、大きな黒い四角は?」
「...トースト」
うう、普段だったら、こんな失敗しないのに。
「そうか。じゃあ、いただきま〜す」
「いただきます」

...に、にが〜。

「り、竜之介、無理しなくてもいいぞ」
「うん?うまいぞ」
「嘘だ、こんな物...」
あ、駄目だ、悔し涙が...。
「なあ、いずみ」
「何?」
「これ作る時、俺のこと考えながら作ったか?」
「うん」
いっぱいいっぱい、考えすぎたから、こうなったんだぞ。
「だったら、俺にとっては、最高の料理だ」
「嘘つき」
「愛する人が、俺のことを思いながら作った料理だぜ。これ以上の物があるかよ」

馬鹿。
「...次は、失敗しないように作るからね」
「期待してるよ」



ど〜も す です。
この所、お笑いばかりやっていたので、通常作品は久しぶりですね。
久しぶりのいずみです。
お約束のネタですが。
「海の時間」の翌朝だと思って下さい。
さて、この後には、いずみシリーズの最終章が待っています。
気合いを入れて、話を作らなきゃ。(気合い入れすぎて、失敗したりして。)