Shaqe Of My Heat

プロローグ


緑のまぶしい平原。
その草の海の中に、青年が横たわっている。
昼寝でもしているのだろうか?目を閉じ、おだやかな表情だ。
「う〜ん。」
「ふあ〜、こう平和な日ばっかりだと、退屈になって来ちまうな。」
「ここじゃあ、ナンパも出来ないし。」
わがままな奴だ。
「地球か、何もかも皆懐かしい...」
ぱ〜ん
おのれは、沖○艦長か〜〜〜。
「いってえなあ、何するんだよ〜。」
何するんだよじゃない。
シリアスなシーンなんだから、真面目にやらんか。
「ちぇ〜、わかったよ。」

「ケンタロウ〜。」
遠くから、呼ぶ声が聞こえる。
「ケンタロウ〜、どこ〜?」
「ティナか。」
そう呟くと、彼は声に答えて、大きな声を出す。
「お〜い、ここだ〜。」
ケンタロウの声に導かれて、褐色の肌をした少女が空を飛んでくる。
「こんな所にいたの?」
「ああ、ちょっと昼寝をな。」
ティナは、まっすぐにケンタロウの胸に飛び込んでくる。
「おいおい、力一杯飛び込んできたら、危ないだろう。」
「ごめんね。」
ケンタロウの胸を離れ、並んで腰を下ろすティナ。
「こんな所で、昼寝してたら、風邪ひいちゃうよ。」
「大丈夫だよ、この星に来て、お前がそんな格好をしてる理由がよくわかった。」
そう言えば、ティナの服装は、ブラとショーツのみと言う、水着のような格好だ。
「ふふ、こっちは暖かいでしょ、地球では、防寒シールドを体の周りに張ってたんだけど。」
「ああ、一年中暖かいんだな。」
「そうか、もう一年経つんだ。」
「いろいろあったな。」
「そうだね。」
この星の王であるティナの父親から課せられた試練を乗り越え、
地球から帰ってきたケンタロウだったが、まだ完全に王から認められたとは言えない状態が続いていた。
しかし、ティナの父親も一国の王、一度口に出した約束は破られることなく、ケンタロウは、
間近にティナとの結婚を控えていた。
「もうすぐ結婚式だね。」
「ああ、そうだな。」
と答えながらも、ケンタロウの表情には、暗さが残ったままだ。
『なあ、地球に行ったこと、あれは本当にただの試練だったのかな?』
『本当は、お前と恋に落ちた、俺への罰だったんじゃないか?』
『試練なら、何故俺の記憶は残ったままなんだろう?』
『何故、俺の心は、こんなにも地球でのことを懐かしむんだろう。』
聞けない。
愛しているからこそ、聞くわけにいかない。
口に出せない思いだけが、心の中に沈殿していく。

「どうしたの?急に黙り込んで。」
「いや、何でもないよ。」
悲しみを飲み込んで、作った笑顔を向ける。
「で?何か用があるから探してたんだろう?」
「あ、そうそう、お父様がね、式の打ち合わせをするって。」
「そうそうじゃね〜よ、じゃあ早く行かなきゃ。」
「うん、そうだね。」
「まったく、肝心なところで抜けてるんだから。」
「ごめん、ケンタロウ。」
宮殿に向かって、二人で歩き出す。

「あの〜、王様?」
「どうしたね?ケンタロウ君」
やけに、話し方の軽い王様である。
「この椅子、手枷と足枷が付いてるんですけど」
「いいじゃろう。」
たしかに、椅子に腰掛けたケンタロウの手足は、しっかりと固定されていた。
「あの〜、身動きできないんですけど。」
「うん、動けたら、枷の意味がないじゃろう。」
「いや、それはそうなんだけど。」
たしかに、身動きをさせないためにあるのが、枷と言う物ではある。
ケンタロウだって、それくらいは知っている。
「それに、身動きできたら、君は逃げ出すじゃろう?」
「逃げやしませんって。」
「それはどうかな?」
王様の目が、邪悪な光を帯びる。
気が付かないフリをするケンタロウ。
「これから、君は改造手術を受けるんじゃよ。」
「え?今なんて。」
「改造手術。」
「な何〜〜〜。」
「ほら、逃げようとした。」
「そりゃあ、誰でも逃げるわ。」
「大丈夫、すぐ済むから。」
「いやだ〜〜〜、どうして改造なんて言葉が出て来るんだ〜。この作品はシリアス物のはずなのに〜。」
「あ、それは別の作品じゃよ。」
「な、なんですと〜。」
「ほら、タイトルを見てごらん。」
「見ました。」
「スペルが違っておるだろう?」
「それは、この馬鹿作者が間違えたんでしょう?」
大きなお世話だ。
「スペルが間違ってる。つまり、少し間違った世界の作品と言う事じゃな。」
「じゃなって、ちょっと。」
このときケンタロウの頭には、弓矢を持ったいずみに追いかけ回される、竜之介の姿が浮かんでいた。
(拙著「愛の妖精」参照)
「いやだ〜、この作者のコミカルなんて出たくない〜。」
えらい言われ様だな。
「竜之介みたいな、悲惨な目に遭うのはいやだ〜〜〜〜。」
「大丈夫、今回はあんな物では済まないと言う話じゃ。」
「もっといやだ〜〜〜〜。」
哀れ、作者の罠に落ちたケンタロウ。
果たして、彼の未来は?
「誰か〜。助けてくれ〜〜〜。」


ど〜も す です。
今回は、下級生です。
う〜ん、もう語ることはないな。
この作品は、私のTears In Heavenと対をなす作品....のはずだったのですが...。
さて、ケンタロウは、この後どうなるのか?
私は果たして連載を書き上げることが出来るか?
読者は、ついてきてくれるのか?
注目の次回をお待ち下さい。
なお、この作品には対になる「シリアス編」も用意してあります。
よろしければ、そちらもごらんください。
(内容の60%程度は同一ですが。)
では、また次回お会いしましょう。
(いったい、いつになるんだろう?)