「夕焼けリンゴ」〜番外編〜

「鳥は鳥に」

「行ったわね。」
「うん、そうみたいだね。」
「やっぱり、自分の目で見るとつらいわね。」
「自分で仕掛けたんだから、ちゃんと見届けなきゃだめだよ、友美ちゃん。」
「うん、でももういいわ、これで吹っ切れるから。」
「ホントに?」
「唯ちゃんもつらいのに、無理なお願いしてごめんなさいね。」
「唯は、お兄ちゃんもいずみちゃんも、大好きだから。」
「でも、つらいでしょ。」
「友美ちゃんほどじゃないよ。でもいいの?」
「何が?」
「いずみちゃんのことだよ。だって、へたするとこのまま.....」
「いいの、こうでもしないとあの娘、ずっと私のこと気にするし、それに。」
「それに?」
「私も、気持ちの整理を付けたかったしね。」
「でも。」
「これでいずみから絶交されても、後悔はしないわ。このままお互いに遠慮しあって、ずるずる疎遠になるよりはいいもの。」
「へへっ、いいこと教えてあげる。」
「何?」
「いずみちゃんたらね、友美ちゃんのこと信じてるから、どうしても来るの嫌だって言ってたんだよ。」
「ホントに?」
「うん、説得するの大変だったんだから。」



「あの娘、ホントに馬鹿だわ。」
「友美ちゃん。」
「お人好しにもほどがあるわ、私にあれだけ言われて。」
「.....」
「馬鹿よ。」
「だから、好きなんでしょ。」
「そうね、だからあの娘には勝てないのよね。」


「つらいね、友美ちゃん。」
「うん、つらい。こればっかりは、一所懸命やったからとか、2番で十分って訳にはいかないもんね。」
「でも、吹っ切らなきゃ。」
「そうね、ところで唯ちゃん。これから私の家へ来ない?」
「いいけど、何?突然。」
「振られた同士で、残念会しましょ。」
「え、もしかして。」
「さあ、今夜は2人でやけ酒よ〜。」
「友美ちゃん、2人とも未成年だよ〜。」
「あら、私は気にしないわよ。」
「ゆ、唯は気にするの。」
「今日、竜之介君帰ってくるかしらね〜。」
「え。」
「このまま映画から、食事って言ってたわよね。」
「うん。」
「竜之介君が、食事だけで済むかしらね〜。」
「う゛〜。」
「いくら吹っ切ったって言っても、朝帰りを目の前で見ると、つらいでしょうね〜。」
「さあ、行くわよ友美ちゃん。今夜は寝かさないからね〜。」
「そう来なくっちゃ。さあ行きましょう。」

 


後書き

どーもどーも「す」です。
さて、今回は「夕焼けリンゴ」番外編です。
本編では、いずみに対して悪役をやってもらった、友美のフォロー編です。
どうしても、いずみの1人称だと説明不足になる部分を補うつもりでの番外編です。
これで、番外編も含めて、「夕焼けリンゴ」は終了となります。
いままでお付き合い、ありがとうございました。
それでは、またお会いしましょう。