「夕焼けリンゴ」〜第8話〜

気合いを入れてはみたけど、やっぱり面と向かってって言うのはちょっとな〜。
竜之介もまだ来てないみたいだし。
ちょうど植え込みの陰にベンチもあるし、ちょっと様子を窺うか。

うん、ちょうど隠れられるな、こんな時は小さいことに感謝したくなるね。



.....自分で小さいことを認めてどうする。


竜之介、来ないな。
もしかして、来ないつもりかな。

私に誤解されたくないから。なんて。
それは、無いだろうな〜。

それにしても友美の奴、まさか本気で誘惑なんかしないだろうけど。

しないよな。

唯は私に来て欲しいから、場所を教えたんだって言ってたけど。
本当にそうなのか?

あ、き来た。
竜之介。
あんなに、にこにこして。
なんて言って呼び出されたんだろう?
なんかむかつくな。

う〜ん、ここからじゃ声までは聞こえないな。
あ、友美がバッグから何か取り出して、竜之介に何か見せてる。
何だろう、見えないな。
竜之介は相変わらず、ヘラヘラしてるけど、友美の奴かなり緊張してるみたいだ。

あ、また何か取り出して、竜之介に渡した。

あれ?
こっちを指さしてるような。

え?友美が帰っていく。
もう終わり?
やっぱり誘惑してたんじゃなかったんだ。

「よかった。」
「なにがよかったんだ?」

ビク

「り竜之介!?」
「ああ、俺は竜之介様だ。」
「どうして私がここにいる事が...」
「ああ、友美が教えてくれたんだ。」
「友美が。」
「嫉妬深いお姫様が、この辺に隠れてるはずだからってさ。」
ばれてたのか。

「で?何でいずみがこんな所で隠れてるんだ?」
「わ、私は.....散歩だよ。」
「ふ〜ん、散歩ね〜。」
「わ悪いか。」
「ふ〜ん。」
散歩はあんまりだったかな?
「で?何でいずみがこんな所で隠れてるんだ?」
ああ、やっぱり。
「正直に言ってみろ。」
「散歩  じゃ  」
「だ〜め、正直に。」
「あ、弓道の道具を買いに」
「遊園地には来ないよな。」
うう。
「いずみ。」
「わかった、話すよ。」
「正直に。だぞ。」

「実は友美から、竜之介を誘惑するために、ここに呼び出してるって言われて。」
「へ?友美から?」
「で、私は竜之介の事も、友美のことも信じてるから、来るつもりはなかったんだけど。」
「うんうん、当然だな。」
「唯に、友美が待ち合わせの場所まで教えたのは、私にここに来て欲しいからだって言われて。」
「そ、そうか。」
あれ、なに赤くなってんだ、竜之介の奴。
「あ〜、唯の言うことにしちゃあ、まともじゃないか。」
「どうしたんだ、顔が赤いぞ。」
「あのさあ。」
「何だ?」
「と友美から、映画のチケットもらったんだけど、一緒に行かないか。」
「え、友美から?」
「ああ、唯の考えが当たってたみたいだ。」
友美。
「はめられた、かな?」
「私の出す条件を飲んでくれたら、つきあってやるよ。」
「何だ、条件って?」
「1つ目は、その後の食事まで付き合うこと。」
「何だ、そんなことならおやすいご用だ。何ならその後のホテルまでつきあってやるぞ。」
「ば馬鹿、まだ早いよ。」
まったく、すぐふざけるんだから。
「まだね〜、まあ後の楽しみに取っとくか。」

「もう1つ。」
「まだあるのか?」
「この間逃げただろう、私のことをいつから好きだったのかを答えること。」
「げっ。」
「答えること!」
あ、竜之介真っ赤になってる。
かわいいな。
「わかった、答えるから笑うなよ。」
「笑ったりしないよ。」
「実はな、友美に紹介されるずいぶん前から、いずみの事見てたんだ。」
「そ、そうか。」
「あれは入学式の時だったかな、かわいい娘がいるなって思ったのがきっかけだった。」
そうか、そんな前から。
「それからはいずみの事、知れば知るほど好きになっていったよ。」
「だったら、どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ?」
「いや、告白する前に友達になっちゃっただろう。タイミング逃しちゃって。」
竜之介、ますます赤くなってる。
「告白して、ふられて、疎遠になるくらいなら、友達でいいかな〜と。」
「馬鹿、鈍感。」
「旅行だって、死ぬ気で誘ったんだからな。」
「私が、竜之介の告白を断るわけ無いじゃないか。」
「悪かったな、鈍感で。」
「あ、それで竜之介が私とつきあうって言ったときあんなにこだわったのか。」
「しょ〜もないこだわりかもしれないけど、正しいだろう?」
そうか、でもそんな所にこだわるのって竜之介らしいな。

「さあ、条件は終わりだろ。映画にいこうぜ。」
ぎゅう〜
「馬鹿、いずみ、恥ずかしいから腕を組むんじゃない。」
「いいじゃないか、恋人同士なんだし、さあ行こうぜ。」
「しょうがね〜な〜。行くか。」

 


後書き

どーもどーも「す」です。
長らくお付き合いいただいた「夕焼けリンゴ」これで、最終回となります。
この作品は、私が初めて手がけた二次創作でした。
最終回を迎えて、うれしいやら、さみしいやら、複雑な心境です。
それにしても、最初は3〜4話の予定だったんですが、今から思えば、無茶な予定でした。
キャラクターの動くに任せて書いてきたので、話自体も最初の予定とは、ずいぶん変わっちゃいました。
ただ、主題は変えて無いつもりですし、作者としては気に入っている作品です。
最後に、やはり感謝の言葉で締めたいと思います。

まず、PON2さん
CGのお礼の名を借りて、いきなり連載を始めたのに、快くスペースを貸して下さってありがとうございます。
あなたが居なければ、この作品は日の目を見なかったかもしれません。
ありがとうございます。

そして、
読んで下さったあなたに。
ありがとうございます。
まだまだ未熟ですが、別の作品でもまたお会いしましょう。