麗子お嬢様といずみさんはチチ戦争のおかげで仲が悪いと思われがちですが、
実は仲の良いお友達なのです。
胸のはなし
ある日の午後、いつものように麗子となりぽしの部屋にいずみさんが遊びに来ています。
かつて『チチ戦争』で争った二人ですが、それももう昔の話。
麗子はなりぽしと暮らして居るし、いずみさんも竜之介と暮らすために家を出ています。
二人とも好きな人と一緒に暮らすために、それぞれ財閥の一人娘、跡取娘の身分を捨てたのです。
そんな二人だから、時々双方の家を行き来してはお茶を飲んだりしているのです。
今日もそんな二人のたわいの無い話が…・
(「たわいのない話とは何よ、なりぽしっ!!!」)
紅茶のカップを置きながら、それまでの話を終えて麗子が話題を振る。
「ねえ、いずみさん…こんな話ご存知かしら。」
「どんな話だい?」
テーブルの上に置かれたお菓子に伸ばそうとしていた手を止めていずみは尋ねた。
「ふふふ、ちょっと意地悪な話になるかも。」
「意地悪な話?」
「そう、意地悪な話よ。 聞く人によってはね。 わたしは平気だったけど…」
「ふーん、ずいぶんと思わせ振りだな。」
「わたしも聞いただけなのだけど・・」
「聞いただけねぇ。」
「ある人が乳がんの検査を受診に病院に行ったんですって。」
「ふむふむ、乳がんの検査ね。」
「そこでね、お医者様が言ったんですって。
『上着を脱いで、下着もはずして・・・』
まあ、ここまでは普通よね。」
「まあ、そうだな。」
「そのあとが問題だからね。 お医者様は続けてこう言ったんですって、『脱いだら胸を机の上にのせて。』って。」
「あう、机の上に…・」
「そうよ、乳がんに限らず乳房の検査の時は、そう言われるらしいわ。」
「そ、そうなのか。」
もう既にいずみの視線は虚空をさまよっている。
「でね、その人も…なのよ。」
「なんだい、その人もって。…『も』って。」
「えーと、言っても良いのかしら・・。」
「もう、大体の予想は付いたよ。」
そう言いながらいずみは視線を下げる、その先には胸があった。(あったのか?)
「ふふふ、そうなの。 その人も机に乗せるほど胸が大きくなかったの。」
「あう・・やっぱり。」
「それでね、その人は言うのよ。
『机にのる胸かそうでないかぐらい、見ただけで判るだろう。』って。
それはそうよね、怒るのも無理ないわよね。
見れば判りそうなものを言われるのは屈辱的なものよね。
ふふふ、いずみさんも机の上に乗せるほど無いから、
その人の気持ちが良くわかるかなって。」
「うぐっ…わ、判る…・けど・・麗子ぉ。
おまえ…わたしの胸が小さいからって・・・・・・・」
「おーほほほほほっ。 いずみさん仕方ないわよね。 事実ですもの。」
「ま、まあいいよ。しかし、どうして乳がん検診の話なんか出てきたんだ。」
「町内の回覧板で経産婦へのお知らせって回覧が回ってきたからよ。
その時にお隣の奥様から聞いたのよ。 そして、今の話の他にもこうも言われたの…・」
なぜか麗子は小さな声になっている。
「なんだよ、急に小さい声になって。 普通に話してくれよ。」
「え、それは…」
「大きな声じゃ言えないようなことなんだな。」
「ま、まあ… 実は…ぼそぼそぼそ〜。」
ほほを赤くしながら麗子はいずみに話す。
その言葉の途中からいずみのほほも赤くなってくる。
「ええっ、毎日旦那様に胸をもまれてるから、仮に乳がんになってもすぐに気づいてもらえるだろうって。」
「い、いずみさん、そんな大きな声で。」
「あうっ、つ、つい。 うーん、それはそれでうらやましい話だな。」
心底うらやましそうにいずみは言う。
「ふふ、そうかも知れないわね。」
「うちの竜之介はなあ。」
「あら、二人で暮らしてるのに無いなんて言わせないわよ。」
「そ、そりゃあ、それなりに…ぼそぼそぼそ。」
「あら、急に小さな声になったわね。 普通に話してもよくってよ。」
「お、おまえって〜。 やっぱり性格悪い〜。」
「おーほほほほほっ。」
勝ち誇ったような麗子の笑い声。
そんなたわいの無い話をしながらも、それぞれに思うところのある二人でした。
いずみ『竜之介のやつ…今日こそは…』
麗子 『胸の話なら、絶対に負けないわね。』
後書き
ううう、なんか自分で読んでみてもたいした事無いSSです。
こんなのを15000HITの記念五択として公開してしまいました。
ま、まあ、許してくださいね。 はうう。 (T^T)
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