
キーワード「奈留」

なりぽしが麗子と結婚してからもう5年が過ぎた。
その間に麗子の父親とも和解をしたし、新しい職にも就いた。
なりぽしはボディーガードの仕事をクビになったあとアルバイトを転々とし、境町の
島津市長の運転手を一時勤め、今は鉄鋼関係の商社に勤めている。
もともと人と争うような事を好まないなりぽしが一時とはいえ、ボディーガードという
職業についたことに関しては自分でも良く解からないが、麗子は
「なりぽしがボディーガードという職業を選んでくれたおかげで、わたしはなりぽしに
会うことが出来たのだからそれだけで幸せよ。」
と言って微笑んでくれる。
麗子に出会う為に・・・・確かにそうなのだろうと思えるなりぽしだった。
なりよりもこの5年間は、麗子と伴に子育てに追われた5年間だった。
チチ戦争も遠い昔の事。
男の子が生まれたら「辰之助」と名づけるつもりであったが、生まれたのは女の子だった。
自分が人の親になるなんて俄かには信じられなかったものだが、病院で看護婦から手渡
された我が子に言い尽くせぬ重さを感じたし感謝もした。
お腹に赤ん坊を宿した麗子を置いて屋敷を飛び出した時の
「なりぽし、なりぽし、なりぽしぃ〜。」と泣き叫ぶ麗子の姿・・・・・・
残された麗子が自殺まで考えながらもそれをせずに自分を探し出してくれた事・・・・・・・
そんなことを思い出したりしたが、我が子を隣にベットで休む麗子にこそ感謝をした。
「なりぽし女の子ね。 うふふふっ、本当はね女の子が欲しいなって思ってたの・・・。」
とても柔らかな表情で麗子は言ってくれた。
「なりぽし、わたしね数えるのよ。 何度も何度も。 えっ、何を数えるのかって?
それはね・・・・・ほら・・・。」
と言って麗子は我が子の小さな手を産着の中から取り出した。
そしてこの世の中で、これ以上ない慈しみの手つきで一つづつ・・・・
「ほら・・・1本、2本、3本、4本、5本。 ちゃんとあるのよ。
右手にも左手にも両足にもね。こんなに小さいのに生意気よね。」
そう言いながら我が子の指を一つづつ数えては微笑む麗子が居た。
「あれ、なりぽし父様泣いてますよ〜。変ですね〜。」
自分も涙を溜めながら我が子に語り掛ける麗子が居た。
我が子には「奈留(なる)」 と名づけた。
親子3人で幸せになろう。
良い事を一つづつ数えながら幸せになろう。
そう思ったなりぽしだった。
PS:いずみさんと竜之介君も結婚してもう子供も居る。
我が家にも良く遊びに来てくれて、うちの小さなお嬢様といずみ夫婦の男の子は仲良
しだ。
男の子・・・・・名前を「辰之介」と言う。
なりぽしと麗子お嬢様が結婚してからのお話です。
オールド・ハワイコナさんから頂いた麗子SS
「Here Is My Heart〜You are not alone」
のその後ということになります。
なりぽしは麗子お嬢様が幸せになる事なら何だってしますし、すべてのSSのエンディング
は当然ハッピーエンドです。
すさんよりも早くいずみと竜之介の結婚について書いて良かったのかという部分もあります
が、ちょっとだけなので良しとしておきましょう。
続編も考えています。
「でも相変わらず文体は堅いわね。」
「はうううう、お嬢様ぁぁぁぁ。」
