ハルジオン


男に振られた。
あの人ならと思ったのにやっぱりうまくいかなかった。
努力した。
あの人に気に入ってもらえるように。
望まれる事は、すべて受け入れた。
それなのに…。
「はあ」

振られた事は、どうでもいいの。
私が望んで付き合っていたわけじゃないし、いつかはこうなると思っていたから。
今までの、ほかの男の人たちと同じように。

でも、別れ際をあいつに見られてしまった。
それだけはどうしても避けたかったのに、あいつに。
「君は、僕と一緒にいても同級生のその彼の話ばかり。君が好きなのは、本当は僕じゃないだろう」
最後のあの人の言葉。
図星だ。
好きになれると思っていた。
でも…。
自分を誤魔化すのは難しい。
それも、自覚している気持ちとなるとさらに。
自分の気持ちに正直になれば。
そうすれば、楽になれるのは判ってる。
でも、自分で決めたんだ、友達でいいって。
臆病なだけだっていう事は判ってる。
でも、恋人になって、いつか離れていくよりは、ずっと傍にいられる友達で…。

「でも、辛いよ」
中学校の入学式で出会ってからもう6年近く。
ずっと気持ちを隠して、あいつの傍にいた。
ずっと、このまま隠し通すと思っていた。
なのにあの時、あいつに見られてしまった。
「聞かれてるよね、絶対に」
聞いていて欲しい。
聞かないでいて欲しい。
自分の心が二つに分かれる。
どちらにしても、そろそろ限界なのかもしれない。
今まで、繰り返してきた季節。
春には花見で、皆で馬鹿をやった。
夏は海で泳ぎ。
秋は紅葉の下、また馬鹿騒ぎ。
冬は雪。
雪まみれになって遊んだ。
でも、これからは…。
夏が過ぎ。
秋が過ぎ。
冬。
年が明ければ、卒業を待つだけ。
私は大学へ進むけど、あいつの進路はまだ未定。
ひょっとすると、就職してこの町を出て行っちゃうかもしれない。
他所の大学に進むかもしれない。
そして、ただの友達とはだんだん連絡もまばらになって…。
「決めた」
聞いてても、そうでなくてもかまわない。
あいつに…。
今までの関係から一歩踏み出して。


「おお、タマこんなところでなにやってるんだ」
「あ、あのね…」
「まあ、その、なんだ、男に振られたぐらい、くよくよせずに…」
「浪馬くん、私…



 ど〜も。
 3/4引退SS書き す です。
 いや〜。
 何年ぶりだ?SS書いたの。
 すっかり遠のいちゃいましたね〜。
 今回は、「下級生2」。
 う〜ん、ありきたりだ。
 一時はこの話、ありきたりすぎて断念してたんですが、視点を変えてもう一本とセットにすれば何とか…。
 で、日の目を見ることとなりました。
 気に入っていただけると、嬉しいんですが。