「ちょっと不思議な誕生日

  ゼロさんから頂いた麗子お嬢様SSですぅぅぅ。
  お勉強で忙しいのに・・・・・なりぽしはとっても嬉しいですぅぅぅぅ。


麗子誕生日SS <ちょっと不思議な誕生日>


11月14日


薄い光がカーテンの間からさしてくる

かるく4人くらい同時に寝ても大丈夫なくらい広いベットから
美しい足がするりと伸びる。

そしてその美しい足の持ち主は軽く伸びをした・・・


こんこんこん・・・・

「お嬢様、御早う御座います。」

大きな扉の向こうから低い声が聞こえる。

しかし、それには応答せず美しい足の持ち主は再び寝入ってしまった。
するとドア越しからすかさず、低い声が聞こえる。

「お嬢様、朝です。起きて下さい。」
「・・・・・っん・・・分かったわよ・・・起きれば良いのでしょう・・・」
「はい。 車の用意はすでに出来ております。」
「はいはい、分かったわ。」

彼女はベットから、眠気まなこを擦りながら出てきた。

彼女は手早く制服に着替え、洗面をし髪を整える。

「・・・・・・・ふぅ」
一通り終えると、彼女は深いため息をつき生徒手帳を覗き込む。
彼女の生徒手帳には、同じクラスのある男子生徒の写真が入っている。
その男子生徒の顔は所々に大小問わず傷がある。
だが、不思議と清潔にしているせいかニキビなどの出来物が無い。
眉毛は太すぎず、かといっても細すぎず良い感じの眉毛を多少細い目の上に
持っている。
鼻はスラッとしていて、口も丁度良い大きさだ。

喫茶店でバイトをしていて、コーヒー等の話になると妙にアツくなる。
そこも彼の良い所だ。

彼女は生徒手帳の男子生徒の写真をしばし見つめる。


そして、またドア越しから・・・・・・・
彼女の朝は、最近いつもこうだ。
使い人の男も、その事にはしばしば参っている。

彼女は、専用のリムジンに乗って学園に向かう。
学園側はそういう特別な行動には抗議をするのが普通だが、この<卯月学園>は
おおらかというか、おおざっぱというか・・・・・・
その彼女の行動は学園側に影響を与えていない為、皆無状態になっている。
まあ、この事に対して抗議する生徒は数多くいるといるらしいが。

彼女はリムジンから降り、教室に向かった。
階段の途中、途中で彼女は小さなため息をつく。

私の気持ちに気付かない、あの人に会わなければならない・・・・
あの人に気持ちを伝えられない・・・・
あの人は私に振り向いてくれるかしら・・・・
そして、あの人は私の事をどう思っているのか・・・・

色々な事が頭を駆け巡る。
一つの悩みごとに、一つのため息をつく。
彼女はふと、階段の途中で足をとめた。
生徒手帳にはさまっている写真の本人が、こちらを向いて陽気な挨拶をした。
しかし、彼女は目を反らし顔を俯いて彼の横を横切る。
そんな自分があまりに哀れに見えて、仕方が無い・・・・・


授業が始まった。
彼女はシャープペンを手の上で、「くるっ」と回転させた。
そして、またため息を一つ・・・・
「どうして、私はあの人の前に出ると正直になれないのかしら・・・・・」
と、ため息をまた一つ・・・・


何も変わらない、何一ついつもと違わない日になってしまっている
今日は、彼女にとって一番大事な日でもあるのに・・・・


そして、いつも通り5時間授業が終了し生徒達は教室を出て行った。
ある者は下校し、またある者は部活動へ行く。

彼女は教室の窓からその姿を見ている。
しかし、その目線は一人の男子生徒へ向いている

やはり、生徒手帳の中に入っている写真の張本人であった。

見つめてばかりいても、自分の気持ちが伝わらないのは分かっている。
でも、彼女には彼に告白する勇気はない。
様々な思いが、彼女の中で葛藤する。



彼女は、彼の姿が見えなくなったせいか教室から出て行った。
彼女にとって一番大事な日が刻々と過ぎていく。
その事に彼女は絶えられなかったのか、自然と目には涙が浮かぶ・・・・・・


彼女は家に帰ってからも、まだ彼の事を気にしている様だ。
決して、こんな私にプレゼントなどと思っている彼女。


夜の11時を向かえた。
しかし、彼女は待っている。
必死に彼の事を待っている。

来ないと分かっているのに・・・・・
来ないと分かっているのに・・・・・



彼女は改めて思った。
(私はあの人が好き。私にはあの人しかいない)と。

この事を決心した、彼女は行動をとらずにはいられなかった。

彼女は、屋敷から駆け出した。
彼に逢う為に。
彼と大事な日を過ごす為に。


そして、もう11時30分。
大事な日も残り30分となった。

彼女は彼が住んでいる、学生寮に着いた。
着いた否や、彼の部屋に一目散に駆け始めた。

どんどんどん!!

彼女は、かなり焦った様子で部屋のドアをノックする。
しかし、部屋の奥からは何もかえっては来なかった。

「なんで、なんでいないのよ!今日は私の大事な日なのに!!」

ドンドンドン!!
彼女はノックする力を強めた。

しかし、心の底から込み上がってくるものが抑えきれなくなり、彼女はその場にへたりこむ。

腕時計の時刻を見てみると、もう11時50分をまわっていた。
あと10分で彼女にとって大事な日が終わってしまう・・・・



秒針が、空しく時の流れを奏でる
一秒一秒確実に刻んで行く
容赦なく、時は流れていく
彼女にどうする事も出来ないのだ・・・・・

コチ、コチ、コチ、コチ、コチ・・・・・・・

腕時計の秒針の音が、静まり返った寮の中にこだまする。

彼女の意識は、脱力のせいか段々と薄くなって行く・・・・・



眠りに落ちたのだろうか、不思議と秒針の音が聞こえない。
ここは、夢の中の世界であろうか。

彼女は目を開け、腕時計を見てみるとなんと11時59分でとまっていた。
秒針が動いていない・・・・・

最初は腕時計が壊れたのかと思ったが、それは違かった。
今、彼女を取り巻く時がとまっている。
寮の壁にかかっている時計もとまっている。

(なんだ私、彼と過ごせないまま眠っちゃったんだ・・・・・)
(だって、時計が動いていないんだもの・・・・・)
(もう、彼と過ごせる時間はないのね・・・・)

彼女は寮のドアによっかかって、大粒の涙を流した
その涙は大粒から、一本の直線になった
肌に涙を感じる。
その涙を感じ、また涙を流す。

いつまで経っても、涙は途切れない。
多分、この涙は彼が来ないととまらないだろう。

彼女はハンカチで何度も涙を拭う。
とうとうあまりに悲しく手の力が抜け、涙を拭っていたハンカチが階段の方へ飛んでいってしまった。
彼女は、ハンカチのかわりに手の甲で涙を拭う。


彼女の涙はとうとう、手の甲では抑えきれなくなった。
ぼろぼろと流れてくる涙。
こらえようとしても、流れてくる涙。
彼女の頭の中は、もやもやになって訳がわからなくなった。

ただ、ひたすら涙を拭った。


ふと、気付くと腕時計の秒針がまた動き始めた。
彼女は戸惑う、さっきまでとまっていた秒針がまた動き始めた。

こち、こち、こち、こち・・・・・・

と、その瞬間、階段の下の方からなんだか騒がしい音がした。

かんかんかんかん!!
階段を駆け上る音だ。

そして、階段を全速力で上ってきた彼は息も付かぬはやさで彼女を抱きしめた。

「悪い、悪い麗子!! バイトが長引いちまって!今日、お前の誕生日だよな!?」
と、彼は息をきらせながらポケットから一枚のCDを出した。
「ほあ、誕生日プレゼント! 倉木 麻衣の<Reach for the sky>欲しかったんだろ?」

プレゼントを渡した後、腕時計を見て残念そうな顔をした。
「・・・・・0時01分・・・遅刻だな。ごめん、麗子。」

「・・・・・・麗子?」

彼女、麗子はあまりの嬉しさにいつも見せない表情を見せた。
それは、何よりも輝いている笑顔だった。

「けんたろう・・・君。ありがとう・・・・」
「おう、遅刻してごめんな。」
「ううん、いいの・・・・」

けんたろうは麗子を部屋に招き入れる。

「ごめん、散らかってるけど」
「いいの、貴方とさえいられたら・・・・」
「・・・・・・・・そっか」

普段こんな姿を見せない麗子の姿を見て、けんたろうは少々どぎまぎしている。
麗子は、本心からけんたろうにすがっている。

けんたろうがあまりにも沈黙にたえられない為、CDをかけた。
さっき、麗子にプレゼントした「Reach for the sky」だ。
甘いバラードが二人を包みこむ・・・・・

「今日だけは、けんたろう君に素直になれる・・・・・」
「・・・・・そっか」
「ふふふ、私らしくないよね・・・・」
「たまには、いいんじゃねぇのか・・・その、そんな麗子もさ。」
「・・・そう?」
「ああ。 しかも、今日・・・じゃなかった昨日はお前の誕生日だったんだしな」
「・・・・うん」

一つの小さなこたつに二人寄り添いあい、手をぎゅっと握り締める・・・・

麗子は手を握りながら、ある事を考え始めた。

(さっき、一瞬時がとまったのはけんたろう君のせいだったのかもね・・・・)

そして、
「けんたろう君、ありがとう」
「なんだよ、改まって・・・・」
「でも、もうちょっととめていてくれたら間に合ったのにな・・・・」
「・・・なんの事だよ?」
「・・・・ううん、何でもないわ・・・・」


ちょっと不思議な麗子の誕生日は、夜がふけていくと共に幕を閉じていった・・・・

そして、またいつもの日が始まった・・・・・・



Happy Bath Day For Reiko........


忘れていた約束 / Forgotten promise
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