愛&美雪 越中路の旅


5:エピローグ

 ついに愛と美雪の越中路の旅が終わる日が来た。

 この富山県の美しい景色、豊かな自然などと別れる日がやってきたのである。

 2人は越中宮崎の民宿を出、電車に乗り込み、帰途に就いた。


 

 通常富山から東京までは新幹線を使うのが普通だが、2人は敢えて糸魚川から大糸線に乗り換え、長野

県松本市から中央本線の特急「あずさ」に乗り換えて帰る事にした。

これだと時間はかかるが、北アルプス、南アルプス、八ヶ岳、富士山などの中部山岳地帯が描く大パノラマ

が望め、料金も新幹線よりも幾分も安いのである。


 
 この日は非常に天気はよく、青空がどこまでも果てしなく続く小春日和の陽気であった。

 愛と美雪は、その大パノラマを眺めながら、駅弁を食べたり、話をしたりなどしてゆっくりと帰りの旅を楽しん

だ。

「愛、龍司くん朝も女将さんから怒られてたね。」

 この龍司くんとは、無論越中宮崎の民宿の息子、水島龍司である。

「ハハハ!そうだったね。『龍司、お客さんに謝りなさい!』な〜んてね。」

「それに女将さんから、『龍司、東京に行ってからもあんなことしたら承知せんで!』なんて言われてたね!」

 2人はこんな事を話しているが、どうもあの水島龍司が気になるらしい。



 穂高岳を見ながら、美雪は言った。

「愛、もうすぐ大学の入学式だね。」

「うん、また春から一緒だね・・・。」

 2人は黙り込み、目を合わせる。



 愛が外の景色を見ながら呟く。

「大学に入ったら、素敵な人に出会えるといいな・・・・。」

 愛は高校時代を思い出していた。そう、彼女が始めて恋を知ったあの高校時代である。

 美雪は愛にウインクし、こういった。

「愛、愛にはこの旅でいい人見つかったじゃない!」

 美雪はニヤニヤしている。

「え、まさか・・・・。りゅ、龍司くんのこといってるの?やだ〜!あの人エッチなんだも〜ん!」

 顔を真っ赤に染めて叫ぶ愛を見て、美雪は笑う。

「ハハハハハ、そうそう、誰かさんに似て!」

 愛は頬を膨らませ、

「美雪ちゃんの意地悪!」

 と吐き捨てる。でもこんな愛を見て美雪は安心した。

「・・・。でも、この旅の目的は果たせたみたい・・・。」

 心の中で呟く美雪。そう、その目的とは、愛を失恋のショックからの失意から抜け出させる為である。

それはどうやら成功したようである。



 2人は特急あずさに乗り換える。夕日に染まる八ヶ岳を見て、美雪は言った。

「愛、いい旅だったね。いろんな人に出会えたし・・・。」

 愛はコクリとうなずき、

「うん、高熊さん、八十一さん、それに龍司くん・・・・。本当、私達に今まで体験した事の無いいろんなことに

巡り合わせてくれたね。」

 といった。

「やっぱり旅は、『出会い』だね・・・。」

 美雪は遠くを見詰めるような目で呟いた。



 やがて列車は東京都に入り、終着駅に着いた。

 2人はTR卯月町駅行きの列車に乗り換え、その終点で降りた。

 辺りはすっかり夜である。

「ふ〜っ!やっと帰れた・・・。」

 愛は重い荷物を手に、ため息を付いた。

 美雪は愛の肩を叩き、

「じゃあ、また大学でもよろしく。」

 と笑いかける。愛は嬉しそうにうなずき、

「うん、じゃ、さよなら。」

 と言った。



 2人は駅前で解散し、それぞれ自宅に帰った。

 こうして2人の北陸富山への卒業旅行は幕を閉じたのである。


                                                                       Fin
              

 H.Saitouさんの下級生SSいかがでしたでしょうか?
 卯月学園を卒業した美雪と愛ちゃんが、新たな大学生活の始まりの前に出かけた越中路の旅・・・・
 笑いや涙・・・・そして恋を予感させる出会いがありました。
 
 H.Saitouさん、連載ご苦労様でした。
 ここまで読んでくださった方々もありがとうございました。
 SSに限らず作品の感想をいただけると作者の方も感慨ひとしおです。
 是非感想などH.Saitouさんにメールしてください。  
 
 

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